まばゆいマジック、光沢増したステージ
新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』
2022年6月3日〜12日 新国立劇場オペラパレス
ルイス・キャロルの原作をバレエ化した『不思議の国のアリス』再演の舞台が、6月3日(金)初日の幕を開けた。
このバレエは、2011年英国ロイヤル・バレエ初演、2018年、新国立劇場バレエ団で上演され、大好評を博したもの。2020年6月に予定されていた公演が中止を余儀なくされたため、今回の公演は、実に待望の公演だった。初日客席には、高円宮家の憲仁親王妃久子殿下が吉田都舞踊芸術監督の隣に、同じ列の並びにマッドハッター役で客演のスティーヴン・マックレーの姿も見られ、満員の客席に華やぎを添えていた。
英国ロイヤル・バレエの来日公演で紹介されて以来、日本でも親しまれてきたこのバレエ。新国立劇場バレエの公演も、初演の際とは、主役のアリスと庭師のジャック以外は、キャストが一部入れ替わっているが、作品自体は一層光沢を増している。
ジョビー・タルボットのオリジナル音楽は、冒頭のアリスの家のシーンからサスペンス調で観る者を引き込み、クリストファー・ウィールドンの振付は、モダンな感覚だが、英国ロイヤル・バレエの伝統を築いたアシュトンやマクミランへのリスペクトも見え隠れ、映像やボブ・クロウリーの装置・衣裳の舞台効果も抜群で、ここは英国ロイヤル・オペラハウスかと錯覚されるほどだった。
主役の米沢唯と渡邊峻郁は、役柄を自家薬籠中のものとして物語の主人公になりきっている。第2幕の最後や、第3幕の終盤のデュエットは呼吸もぴったりで見応えがあった。
ルイス・キャロル/白ウサギ(木下嘉人)は、ひょうひょうとして物語のキーパーソンを好演、アリスの母/ハートの女王(益田裕子)は、第2幕の「ローズ・アダージオ」のパロディでユーモアのセンスも絶妙、手品師/マッドハッター(ジャレッド・マドゥン)は奇妙なお茶会でワクワク感を倍加、コール・ド・バレエは、第2幕の壮麗なワルツや第3幕のトランプのカードの踊りなど生き生きと…とにかく全編、見どころに事欠かず、舞台に散りばめられた様々なマジックを満喫させてもらった。
指揮はネイサン・ブロック、管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。
終演後は、客席総立ちとなり、客席は熱い興奮に包まれた。この熱気はおそらく千秋楽まで続くことだろう。どのキャストを見ても舞台を十二分に楽しんでもらえるに違いない。
渡辺 真弓
※写真はいずれもGPで撮影されたものです。
🌾 他日キャストの公演レポートは本紙7月発行号に掲載予定。
★この後の公演日程及び主演キャスト(アリス/ハートのジャック/マッドハッタ―)は次の通り。
6月5日(日)2時:米沢唯/渡邊峻郁/ジャレッド・マドゥン
6月8日(水)1時30分:池田理沙子/井澤駿/スティーヴン・マックレー
6月9日(木)1時30分:小野絢子/福岡雄大/福田圭吾
6月10日(金)1時30分:米沢唯/渡邊峻郁/中島駿野
6月11日(土)1時: 池田理沙子/井澤駿/福田圭吾
6月11日(土)6時30分:小野絢子/福岡雄大/スティーヴン・マックレー
6月12日(日)2時: 米沢唯/渡邊峻郁/スティーヴン・マックレー
【お問い合わせ】☎︎03・5352・9999
◇全国公演
会場:高崎芸術劇場 大劇場
6月18日(土)2時:米沢唯/渡邊峻郁
6月19日(日)2時:小野絢子/福岡雄大
【お問い合わせ】☎︎027・321・3900